2012年02月01日

ゾーンの経験

1997年3月、PGAティーチング最終プロテストのため、私は静岡県・富嶽カントリークラブに来ていた。当時30歳を過ぎていた私は、色々な意味でケジメをつけるため、このテストに合格しなければゴルフとは一切縁を切るつもりだった。

テスト前日の練習ラウンドのスコアは84と大崩れ。ショット、パット共に合格には程遠い最悪の調子。練習ラウンドを終えてホテルへ戻ったが、不調と不安で気分はストレスだらけ。ベッドに座って溜め息をつくと、うつむいた視線の先に無造作に転がっていたボールを、八つ当たりするかのように蹴った。

「あれ?、同じじゃないか。」床の転がりの感覚がコースの高速グリーンとそっくりなことに偶然気がづいた。たわいもないことだったが少々得をした気分になった私は、「きっと今夜は眠れないだろう…」と、ただひたすらに一晩中パットの練習を繰り返した。

当日はまるで不調を嘲笑うかのような快晴。僅かな望みだったスタート前の練習もやはり最悪。でも、そこで考えた。「たぶん今日が人生最後のゴルフになる。だから、なりふり構わずやろう、どうせ曲がるのなら曲げてプレーすればいい。最下位だけにはなるまい。」と。

こうしてテストが始まったのだが、プレーを追うごとに不思議な事が起き始めた。不調のはずのショットがことごとくフェアウェーを捉える。グリーン上には薄白いラインが浮かび上がり、気持ちが悪くなるほどパットが入る。3度のチップイン。終わってみればスコア+1、なんと10位で合格してしまったのだ。

今思えば、人生の岐路に立たされていたことや不調からくるストレスは相当なものだったはず。しかし、結果を恐れずにチャレンジするポジティブな思考に切り替えたことで、良性なストレスによる刺激反応、即ちアドレナリン分泌や覚醒レベルの増加などが促進されて脳の活性化に繋がった適度な興奮状態、いわゆるクールに燃えて最高のパフォーマンスとなる「ゾーン」を作り出していたのだ。

こうした経験は、脳内活性化作用によって必然的に現れたパフォーマンスで、ゴルフ生理学でも論理的に立証されているプロセスであったことが後に判明し、私にとって大きな財産となった。気持ちがへ込んだ時、この経験を思い出すようにして、心も体も生活も元気になるようモチベーションアップに活用している。

posted by プロゴルファーKAZU at 00:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | スピリチュアル